大きな声で言えないこと

店主が所属する神奈川古書組合にはいくつかの非公式な「部活」があるようである。例えば将棋部のように「初歩から教えるから入会金3,000円出せ」とそれほど強くなさそうな部員から勧誘されることもある。店主は駒の動かし方すら知らないので、入部することは控えている。
実はあまり大きな声でいうことはできないのだが、ここ数ヶ月間かなり恐ろしい「部」からの勧誘を受けている。仮称らしいのだがその名は「家庭不和クラブ」という。その勧誘の仕方は相当に巧妙である。いわゆる「会長」らしき人は、催事等で一緒に仕事をした組合員に「君のうちは奥さんとはうまくいってないんだろう?」とか「君は家での居場所はないんだろう?」のようにストレートに質問をするのである。店主のような年齢になるとそのような質問にはあまり真剣に答える気がなく、「まあ、そうかもしれませんね。」というようにテキトーな返答をすると大変なことになる。「わかった。君は家庭では相当つらい立場にいる。苦しい時は何でも俺に相談してくれ。」と「会長」からは満面の笑みをもって握手をされるのである。
これだけであればあまり実害はないのだが、実は「会長」の真の目的は「会長職」を禅譲する人間を見つけることにあるようだ。それを禅譲された人間は「神奈川組合一番の家庭不和人間」として周囲から畏怖の念をもって見られることを覚悟しなければならない。
現在の「会長」がだれであるかは口が裂けても言えないのは当然のことだ。